電波男 読後感想。



読みきりました。感想は途中まで読んだ時とあまり変わらず。
結論だけ言うと自分にゃ合わない文章でした。や、自分もヲタですが賛同できないや…。
やたらと扇動的である事と。ルサンチマン全開な事。
この2つがどうしてもダメだ。この本に対して「否」を唱えたくなる。




まず、この本が扇動的だと思った理由のひとつに
「人間をカテゴライズしてそのカテゴリーに則し大雑把に話を進める」というのがある。
女(三次元)は、顔で男を判断する。DQN大好き。しょせん肉壷。と罵り。
イケメンはDQNで頭にセックスしかない。鬼畜。
オタク(二次元に萌えれる)は、萌えで負の感情を浄化できる心優しき人間。
血液型性格判断じゃねーんだからさ、あまりにもおおざっぱかつ悪意ある独善だってば。
なんというか、この辺で「あ、扇動家だな、この筆者」って思ってしまった。


ヲタにも鬼畜DQNはいるし、女にも「顔は関係ない」という人はいっぱいいる。
キモメンとカテゴライズされる人でもモテる人もけっこういる。
恋愛至上主義のスケールに合わせると「この男がなんでがあの娘と?!」という
パターンを自分はいくつか知っている)
たぶん筆者はこのへんも全部わかっていて、わざとそれに触れないで
扇動的な文にしてあるんだろうなぁ。悪い意味で「読み手を意識した書き方」だなぁと。




漫画『ルサンチマン』のエントリ*1でも書いたが、
二次元に引きこもる事だけで生きていけるようになったら、
それは幸せな事だし、そういう現実がきたら三次元を捨てるのも悪くない選択だと私は思う。
所詮、二次元も三次元も「思い込み」で成り立ってるものだしね。差はないよ。
ならば、ゆりかごの中で夢を見つづけるのは幸せだと思う。


ただ、現代の技術や社会システムではそれはまだ不可能なんだ。悲しいかな。
僕らは食わなきゃ生きていけないし、働いて金を稼がなきゃ食えない。
僕らは子孫を残せという種の命題から、繁殖を繰り返す。
僕らは他人と関わり合い、共感したり反発したり、助け合ったり傷つけ合わないと社会で生きてゆけない。
三次元を捨てきる事は今のシステムの中では不可能だよ。
現代社会で生きている以上、そこに気づけない人はそういないと思う。もちろん作者も。




そしてなにより、この『電波男』に共感できなかったのは、
劣化コピペのニーチェ臭さがどうしても鼻について仕方ないからだ。(同属嫌悪か?)


萌えによるヲタたちの完全勝利宣言を「高らかに謳う」時点で間違っている。
本当にヲタが勝利したならば、勝利宣言なんてしなくても
恋愛至上主義は駆逐されている(もしくは、駆逐されて行く)はずだ。この本は必要ない。


筆者の徹底的な三次元女への罵倒は、三次元女への未練の裏返しにしか見えない。
本当は三次元女に愛してもらいたいという思いが、
誰よりも強いその思いが、ルサンチマンが見え隠れしている。
食えなかったブドウは酸っぱいんだと騒ぐ狐にそっくりです。
本当に二次元萌えのみで生きていけ、三次元の女に興味がなければこんな著書は出さないはずだ。


本来、ヲタ賛美であるこの本に対して拍手で迎えたい気持ちがすごくあるし、
筆者の多角的な視点のもって行きかたは好きなんだけどね。
その素晴らしい視点も、結局、筆者の根底にあると思われる「三次元女性へのルサンチマン」に
一点集約させてしまっているところが悲しいなぁ…。


この本は二次元への愛よりも三次元への憎悪が勝っているよ。
そしてなにより、本当は三次元の愛を切望しているんじゃないのか。
そんな愛への叫びは悲しすぎますよ。


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