ちーちゃんは悠久の向こう/日日日



まいったね。
たしかにこれを17歳くらいの高校生が書いたとは思えない。
ライトノベルってジャンルじゃないんだろうね。挿絵がまったくないし。
表紙のちーちゃんも後ろ半身しか見えず、顔はわからないまま。
そして物語には救いようのない遣る瀬無さが充満しております。
読み終えたときに、初期の松崎ナオを思い出しましたよ。


主人公であるモンちゃんは壮絶に不幸な環境で生きてきた人間だ。
本当の不幸を味わって、それでも生きている人間は強い。
不幸を嘆くのではなく、それを諦観を持って受け入れる事のできる人間は強い。
その強さがあまりにも哀しい強さだという事を置いておいてもだ。

何かを求めて叫び狂うような生き方は 僕の性にあってない事だから
僕はここに残る ここにいるよ さぁ行けばいい


松崎ナオ『How to be A Sun』

私にはモンちゃんのように強くなれない。
モンちゃんほど不幸のエキスパートじゃない。
毎日をのうのうと生き、平凡な幸せを享受している。
それどころか、時に「弱さ」を売りにしたりもする。
それを誇る事はしないが、それを恥じ、モンちゃんのように生きたいとも思わない。
私はモンちゃんにはなれないし、その不幸を請け負う事もできない。
決して交わることの無い線。僕らは決して他の誰とも交わる事ができない。
誰も救う事ができないから、誰も理解する事ができないから。
そんな事はわかりきっている。僕らは誤解しながら生きている。
だからこそ、誤解であるがゆえ、交わる事ができないからこそ、
あえて己を伝えようと無駄な努力をし続ける、
せめて言葉だけにでも耳を傾けようと無駄な努力をし続ける、
それを楽しむ心意気で。


ちーちゃんは悠久の向こう (新風舎文庫)

ちーちゃんは悠久の向こう (新風舎文庫)