蟲と眼球とチョコレートパフェ/日日日



あぁもぅ…悔しくて悔しくてたまらない。
キモヲタ発言。
「久々にラノベ読んで目頭が熱くなった。」




前作、前々作で登場した「ヘビ」と「消毒殺菌」である殺原美名が再登場。
そして、殺菌消毒の妹として「不快逆流」殺原密姫が新キャラとして登場。


いままで主役であったグリコや愚竜、鈴音はほとんど登場せず、
敵であったはずの殺原姉妹とヘビ(御貴)、そこに愚竜の義妹である
竜ゑが加わった4人が物語の中心に据えられています。
そしてそれぞれの悩み----それは「異形」である事だったり「代替」である事だったり----
を抱えながらの奇妙な友情と恋心が描かれています。


素直に読み進めていくと、4人の前に立ちふさがるグリコが
まるで「敵」のスタンスような登場をしたり。
読者の視点は前作までと切り替えられる仕組みになってます。


世の中は勧善懲悪のようなスッパリとした物でなくて、
ドロドロとそれぞれのエゴが溶け合ってできている。
視点を変えれば善は悪に、敵は味方に。
前作までの流れと今作で、それを違和感なく取り込んでる感じがして良いです。




そして個人的に思う今作最大のポイントは、
全員の動機が「大切なあの人のために」だという所。


美奈、密姫、竜ゑ、御貴、愚竜、狂清、梅、そしてグリコ
全員が誰かのために動く。


舞台とキャラクターは違えど、根底に流れている物は狂乱家族日記とまったく同じ。
誰かを守りたい、誰かを大切に思う、誰かと一緒にいたい。そう思う事。
世界のためにとか、正義のために、とかそんな大それたもののためにではなく、
大切なあの人のためだけに動く。


それはこうやって短い文で文章力がない自分なんかが
まとめてしまうと安っぽい偽善(偽愛?)にしか表現できなくなってしまうけど、
今作に書かれてる「あの人のために」は偽善ではない。
彼らが行うそれは、実は「(自分が)あの人のためになりたい」
「(自分が大切に思う)あの人を守りたい」というエゴでしかないって事。
それはエゴだとわかりながら、それでも大切なあの人のために動きたいというするその姿勢。
そのエゴは決して不快ではない。


それぞれがそれぞれの目的のために。他人のためでなく己のために。
だけどそこには奇妙な共闘や友情が存在して。影響しあって支えあう形に。
それなんてファンタジー
まっとうすぎて。理想的すぎて。読んでて苦しくなるって。悔しいなぁ。




読後の興奮でなんだかイタい事をだいぶ書いた気がしますが、まぁ気にしない。
ぶっちゃけ前作まではこの蟲と眼球シリーズには狂乱ほどの入れ込みはなかったのですが、
予想をいい意味で裏切る良作に化けた気がします。お勧め。